第75章 無題Ⅰ
ラビは私の心を強いって
そう言ってくれたけど
自分で強いと思ったことはない
こうして簡単に恐怖を感じて
情けなく体は震えるし
殺されないとわかってても
だからって強く抗うこともできない
私は弱いよ
AKUMAの言う通り、簡単に死んでしまう
体も心も弱い存在
でもね
「放し…て、」
それって、私だけじゃなかったんだね
「あんた…いい加減にしなよ」
「オイ、人間風情に構うなよ。さっさと方舟にコイツらを運ぶぞ」
最初から強い人なんていない
誰だって弱い心は持ってる
それでも踏ん張って、立ち上がって
皆、守りたいものの為に命を張ってたんだ
「いーや、癇に障った。二度と話せないようにしてやる」
「っ!ぐ…ッ」
AKUMAの手が乱暴に私の顎を掴む。
メキメキと強い力で締められて、痛みが走った。
「もうその悲鳴が聞けないのは残念だけどね。…最後に一言だけ喋らせてやる。最後だ、慎重に言葉は選びなよ?」
「っ…」
怖い
ここで格好良い捨て台詞の一つでも
言えたらいいんだろうけど
私はラビみたいなヒーローにも
リーバー班長みたいな頼れる大人にも
きっとなれないから
格好良く強い言葉なんて吐けないけど
AKUMAの気を引ける程の言葉も思い付かないけど
「…っ…わ…たし、の」
でもね でも
「…大切な人達…を、…傷付けないで…っ」
私だって、この手で守りたいものがあるから