第75章 無題Ⅰ
「アレ、ン…に、触らないで…っタップを…皆を、連れて…行かないで…ッ」
「あんた…まだピーピー喚くつもりか」
黒い方舟の板の上で、私を抱えて沈みゆこうとしたAKUMAの体が止まる。
少しの間だけでもいい。
時間を稼げるなら。
それで元帥達が間に合うなら。
「あんまり目障りなことすると、その口ズタズタに引き裂くよ」
「っ…」
怖い。
殺されなくても、痛みへの恐怖はある。
その恐怖は私の体を竦ませて震わせる。
語尾は情けなく震えて、拙い言葉しか吐けない。
アレンのように強い目を向けることも、リーバー班長のように啖呵を切ることもできない。
……でも。
「アレ、…を、放して…っ」
震える口を開く。
ここで止まったら駄目