第75章 無題Ⅰ
抗わないと。
声を出して。
元帥達が来るまで、どうにかしないと。
「…っ…」
なのに声が出ない。
力の入らない瀕死の体だからじゃない。
それは"恐怖"からだった。
痛みへの恐怖。
死への恐怖。
悪寒と恐怖で小刻みに体が震える。
───私は弱い
どんなに強くありたいと思っていても、突き付けられる現実は私の体を竦ませる。
死を間近に感じながら抗うことが、どんなに大変なことなのか。
どれだけ強い意志がないと、できないことなのか。
その思いを突き付けられて、はたと気付いた。
「………」
…アレン達はエクソシストとしての力を持っているから強いんじゃない。
それだけの意志を持ってたから、強く抗い戦うことができたんだ。
誰だって死は怖い。
そこにエクソシストも人間も関係ない。
アレンもラビも神田もリナリー達も。
エクソシストだけじゃない、リーバー班長達もそう。
皆何かを守りたくて、命の保障なんかなくても戦ってたんだ。
「ッ…」
アレンが体を張って、私を助けようとしてくれたように。
リーバー班長が危険を承知で、私を救おうとしてくれたように。
タップが、命懸けで私を守ろうとしてくれたように。
「…や、めて…」
「………あん?」
皆、強いからできたことじゃない。
何かを守りたくて、できたことなんだ。