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科学班の恋【D.Gray-man】

第75章 無題Ⅰ



「だからもう少しの間、我慢してて」

「っ」



ぐっと歯を食い縛って、支えていたアレンの体に力がこもる。

我慢なんて。
私はアレンに助けられてるのに。
そう口に出す代わりに、その身をアレンに寄せた。

薄い色の目に強い光を宿らせて、周りの夥しい数のAKUMA達を睨み付けるアレン。
ぐっと右手に握った退魔の剣を振り上げて──



ガッ…!



「っ!?」



その攻撃の手を止めたのは、黒くしなる太い鞭だった。
見覚えがある。
それはジョニーの体を貫いた、あの太い鞭。



「目障りな剣だ」



いつの間に其処にいたのか。
アレンのすぐ傍に立っていたのは、褐色の肌の女性。
あの変身能力を持つノアだった。
アレンの右手首に巻き付けた鞭で動きを封じたまま、もう片方の手が同じく太い鞭へとしなやかに変わる。



───バンッ!!



その強烈な一打は、アレンに防ぐ暇も与えず一瞬にして横っ面を鋭く弾いた。



「…ッぁ…」



脳震盪を起こしたかのように、大きく見開いた目を揺らがせてくらりとアレンの頭が揺れる。



「アレン…!」



力を失った体が傾いて倒れる。
咄嗟に手を伸ばす私の体を包んでいた白いマントが、ふっと消え去った。

それはイノセンスの発動が解けたことを意味していて。
同時に、アレンの意識が途切れたことを意味していた。

まずい…!



「エクソシストめ…!」

「ッやめて!」



周りに群がっていた一体のAKUMAが、その鋭利な腕を振り上げる。
咄嗟に倒れ込んだアレンの体を庇うように、上に覆い被さった。

エクソシストじゃない私が、アレンをAKUMAから守り抜く方法なんてない。
それでもそれ以外にできることなんて、この場で思い付かなくて。
力の入らない腕になんとか力を込めて、アレンの体を強く抱きしめた。



「人間風情が邪魔するな!」

「ッ…!」



振り下ろされる腕。
ぎゅっと強く目を瞑って歯を食い縛る。






「待て」






次の瞬間には鋭い痛みがくると身構えていた私の耳に届いたのは、凛としたノアの声だった。

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