第75章 無題Ⅰ
「小僧!」
マントの中にも届いた、ブックマンのアレンを呼ぶ声。
焦ったようなそれに、慌てて押し込まれたマントの中から顔を出した。
「ッ!?アレン…!」
「ッ…」
そこには、シュウウ…と体から煙を出しながら力なく項垂れるアレンの姿があった。
あの強い光はAKUMAによる攻撃だったのか。
ふらつくその姿に、なんとか踏ん張ってマント越しにその体を抱いて支える。
腹部の痛みなんて気にしてる場合じゃない。
このままじゃアレンもブックマンもやられてしまう…ッ
「ッ南さ、は…隠れ、てて…ッ」
「私なんていいから…ッ自分を守って…!」
どう見ても足手纏いでしかない自分に、嫌気が差す。
私を抱えて戦うなんて、アレンの重荷にしかなってない。
「私は何処かに隠れてるから…っ放してッ」
「駄目、です…放さない……放したら…連れて…いかれる…」
アレンの意志に反応するかのように、私の体を包む白いマントの束縛が強くなる。
「ラビと、約束…したから…絶対、助けるって…」
「アレン…っ」
体から煙を上げながら、力なくアレンの目が私に向いた。
「…ううん……約束なんか、なくたって…僕が…失いたく、ないから…」
「アレ…ン」
「だから…離れないで。傍に、いて下さい」
静かだけど意志の強い声。
そんなアレンの言葉に、何も言えなくなってしまった。
私はアレンの戦闘の負担になってる。
きっとそれは事実。
でもアレンにとって、私が見えない場所にいる方が負担なんだ。
何処かに身を隠しても、きっと色々と気にさせてしまう。
そう思うと下手に動けなかった。
「大丈夫…ラビが皆に、知らせてくれてるから。師匠達も此処に来ます」
「え…っ」
思いもかけないアレンのその言葉に、僅かな希望が宿る。
元帥達が来てくれたなら、きっと。
この現状を打破できる。