第75章 無題Ⅰ

「やめろッ！！！」



声を張り上げたアレンがスカルに突っ込む。
私を抱いたまま。



「アレ…っ！私…置いて、いいから…ッ！」

「駄目だ、今は僕といて！AKUMAに捕まっていたなら、また狙われる危険がある！」

「ッ…」



アレンの言葉を否定はできなかった。
私はタップと同じに、スカルとかいう人形の材料に適した人間らしい。
そういう意味では、また捕まる恐れはある。



「ごめん南さんッ掴まってて！」

「っう、ん…ッ」



左腕を退魔の剣に変えて発動させているアレンは、右手しか使えない。
私を満足に抱えられないアレンに、なんとか力の入らない腕を回せばその大きな白いマントが支えるように、私の体を包み込んでくれた。



「"オン"」

「あぁあぁあああ！！！」



無情なスカルの術の言霊。
それと同時に、研究員の体が炎に包まれて劈く悲鳴が上がる。
やめて…！



「やめろって言ってるだろッ！！」



そんなスカルに向かって退魔の剣を振り下ろすアレンに、その攻撃を防いだのは無数のAKUMAだった。
手を突き出して、透明なシールドのようなものを作り出して防御壁を作る。



「ぐッ…！」

「アレン…！」



別の場所から突っ込んできた無数のAKUMAが、アレンの体に衝突して吹き飛ばす。
私の体は鎧と同じ強度を誇るマントで包んでくれているから、ダメージはない。
でもアレンはその攻撃を直に受けてる。

数が違い過ぎる。
どんなにAKUMA一体に対してアレンの力が勝っていても、敵の数が多過ぎる。
これじゃアレンもやられてしまう…！



「大丈夫…ッ"道化ノ帯(クラウンベルト)"！」



白いマントから飛び出した無数の白い帯が、周りに群がっていたAKUMA達を貫く。
だけどすぐ様次の敵はまた現れた。



「アレン後ろ…！」

「！」



奇襲するかのように、背後から飛び出してきたAKUMAの手がアレンの頭を掴む。



「貰ったァ！」



カッ！とその掌が攻撃を放つ前触れか、強い光を放つ。

まずい…！
このままじゃ直に頭に攻撃を受けてしまう！