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科学班の恋【D.Gray-man】

第75章 無題Ⅰ



ぐんっと、急に視界が揺らいだ。



「ッ!?」

「南!」

「待て!」



強い力で羽交い絞めにされたまま、急に素早い動きでその場から離れるように飛行するAKUMA。
リーバー班長とアレンの声がして、一気に二人の姿が遠くなる。
すぐ様その後を追うように、地を蹴ったアレンが迫る。



「ぅ…ッ」



揺れ動く激しいAKUMAの動きに、振り回される頭部。
ぐるぐると視界が揺れる。
気持ち悪さと腹部の怪我の所為か、意識が朦朧とする。
必死で踏ん張っていないと、意識が飛びそうで。



「南さんを放せッ!!」



そんな私の意識を保たせてくれたのは、アレンの強い声だった。
だけど追ってくるアレンを阻むかのように、大量のAKUMAが迫る。
それを握っていた大剣で、あっという間に蹴散らしていく。

あの大剣は確か、アレンが方舟の中でノアと対峙した時に発動させた"退魔の剣"という代物だったはず。
イノセンスとの同調を100%越えたアレンがその左腕から創り出した、新たな強い武器。
だけど。
今この場にいるノアと夥しいAKUMAを相手にしているのは、そのアレンとブックマンの二人だけ。
果たしてそんな状態で勝ち目はあるのか。
僅かな不安が浮かぶ。



「んァ!?痛い痛い!なんだコイツ!」

「!…ティ、ム…っ」



不意に私を羽交い絞めにしていたAKUMAが悲鳴を上げる。
見れば、その頭にギザギザの刃で齧り付くティムキャンピーが見えた。



ドッ…!



同時に衝撃音。



「ぁガ…ッ!?」



AKUMAの口から零れる鈍い悲鳴。
見えたのは、私ごとAKUMAの体を貫いているアレンの退魔の剣。

でも私に痛みはない。

この退魔の剣が効果を発揮するのはノアとAKUMAに対してだけで、私達人間やエクソシストには無害なものだと聞いていた。
それって、こういう意味だったんだ。



「っ…!」



ぐらりと揺れたAKUMAの体が、力を失ったかのように重力に従って落下する。
同時にその腕に掴まれた私の体も一気に降下して。



「南さんッ!」



がしっと、強い手に腕を掴まれてそれは止まった。

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