第75章 無題Ⅰ
「タ、ップ…?…タップ、タップ…っ」
声をかける。
手を伸ばす。
AKUMAの腕の中からじゃ、到底届かないけれど。
「タップ…!ねぇ、タップ…!」
生きてるの?
何されたの
大丈夫?
私がわかる?
ねぇ、こっち見て
「タップ…!」
「お前さんの声は届かないよ。あれはもう人間じゃない」
「っ…え…なに…」
「言っただろう、あれは"人形"に造り変えた。あれはもう我らと同じ"守化縷"だ」
「スカ…ル…?」
スカル…?
スカルって何
ああ、さっき言っていた
"卵"を番する人形とか…
……何…それ
タップはそんな人形なんかじゃない
「違…っ違う、タップは…ッ」
「否定するのは構わんがね。お前さんもすぐ仲間入りさ」
「タッ…」
AKUMAの腕に抱えられたままの私の額に、骸骨の手が伸びる。
「ッ…嫌…!」
「大丈夫、すぐ終わる」
「っ…ぃや…ッ」
嫌
死ぬ
私も死ぬ?
タップと同じ?
ううん
タップは死んでない
ほら、だって其処に座ってる
見た目は少し変わっちゃったけど
あれはタップなんだから
「タップ…ッ」
あれはタップ
間違えるはずがない
ずっと今まで一緒だったんだから
一緒に残業ばっかりの仕事して
一緒にお酒飲み回して馬鹿やって
一緒に雑魚寝して
一緒にリーバー班長に怒られて
ずっとずっと、一緒にいたんだから
ずっと、一緒に
「タップ…ッ!」
───ドンッ!
「──!」
銃撃音。
私の目の前にいた骸骨の頭に、真横から撃ち込まれる銃弾。
「なんてことしやがる…ッ!」
───あ。
この声…
「……リーバー…班長…」
目を向ける。
確かにその人は其処に、立っていた。