第75章 無題Ⅰ
「ぁ…嫌、いや…タップ、嘘…ッ」
嘘
嘘だ
こんなの嘘
嘘に決まってる
「タップ…タップ、」
声が震える。
手を伸ばすのに、届かない。
「"アバタ・ウラ・マサラカト"」
骸骨の手がタップの黒い顔に翳される。
言霊のようなものをブツブツ呟きながら、タップに"何か"していた。
やめて
触らないで
「"オン・マギジバ"」
タップの体に触らないで
変なことしないで
「や、めて…ッやめて…、お願い…ッ」
目の前がじわりと滲む。
滲んだ視界は、タップの体をぼやけさせた。
溢れた熱いそれを止めることはできなくて、次々と頬を伝って零れ落ちていく。
「やめて…ッお願…っだから…ッタップ…!」
触らないで
酷いことしないで
「っタップ…ッタップ…ッやめ、て…っ!」
大事な人なの
私の大事な仲間なの
大事な私の
「"キイキ"」
ピクリと、タップの体が微かに動いた。
「っ…え…」
一瞬の出来事だった。
まるで人形のように、唐突にむくりと体を起こす真っ黒なタップ。
その真っ黒な顔が、一瞬で骸骨へと変貌する。
それは"術"というものを施していた、その骸骨と同じものに。
「まずは一体、と。服は後であげよう」
そう話す骸骨に、タップの体は何も応えない。
応えないけれど、確かに起き上がっていた。
到底タップには見えない姿で。