第13章 初任務
「よくできました」
「けほっ…何、…アレン…っ」
思わず口の中にある小さな固形物を飲み込めば、笑顔で塞いでいた手を離される。
「それはこっちの台詞です。さっきから呼んでるのに、南さん上の空で食事するから。溢してますよ」
むぅっとした表情で、アレンがフォークを机に突き立てる。
…違った。
机に転がってる、小さなコーンに。
多分さっき食べさせられた固形物は、このコーンだ。
そして口に突っ込まれた固い何かは……あのフォーク。
………。
アレンって食に対しては厳しいというか怖いというか…時々黒いよね。
「ご飯が勿体ないです」
「…ごめんなさい」
アレンの声掛けで、周りの状況を思い出す。
そうだ、食堂で一人でご飯食べてたんだっけ。
いつの間にアレンが隣で食事してたんだろ。
あんなに大量の料理を持ってきてるのに…全く気付かなかった。
余程ラビへの思考で周りが見えていなかったんだろうな。
私のお皿のサラダからは、ぽろぽろとトッピングされたコーンが転がっている始末。
それを見事な早さで、ぷすぷすとフォークに刺して自分の口に運ぶアレン。
手際が早過ぎて、よく見えません。
「どうしたんですか?最近よく、ここに皺が寄ってるって。リナリーが言ってましたけど」
とん、とアレンの手袋をした指先が、私の額の真ん中に触れる。
もしかしてリナリーに聞いて心配しに来てくれたのかな。
…やっぱりアレンとリナリーって仲良しだよね。
ずばり付き合って…げふん。
なんでもないです、ごめんなさい。
思春期の恋はそっとしておこう。
「あー、うん。別に……いや、アレン」
「はい?」
首を横に振って、途中で考え直す。
女性には紳士なアレンだし。
聞いても、大丈夫かな…?
「ラビってさ、最近任務でどう?いつもと変わらない?」
私は教団内でのラビしか知らない。
年齢も近くて同じエクソシストという立場。
そんなアレンなら、何かラビの変化の原因を知ってるかもしれない。
「ラビですか?ええ、はい。いつも通り、馬鹿なこともするし迷惑もかけてきますよ」
「………」
…うん。
アレンってさ、ラビに対して割と黒いよね。
普段はとっても紳士なのに。