第75章 無題Ⅰ
「お前さんのミソの出来も良さそうだし」
「やめて!タップに手を出さないで!」
「馬鹿、逃げろって…!」
咄嗟にタップの体に覆い被さるようにして庇う。
「嫌…!絶対に離れない!」
「お前…っんの…!」
「ッぁ…!?」
どんっと強く、遠慮ない力で体をタップに押される。
腹部の怪我で満足に踏ん張れない私の体は、簡単に弾き飛ばされた。
「言ったろ、オレはお前の保護者役なんだって…!」
「タップ…ッ」
「貸しだからな、南…!さっさと逃げろ!」
「ぃ…嫌…ッいや、タップ…!」
必死にタップに手を伸ばす。
突っ撥ねるタップの気持ちが、痛い程にわかったから。
いつもは私のこと、女としても扱わない癖に。
飲み会で遠慮なくお酒ガブ飲みさせたり、仮眠室で遠慮なく寝潰してくる癖に。
こんな時だけ、格好付けて命なんて張らないでよ…!
「おやおや、麗しい仲間愛か。大丈夫さ、二人共ミソの出来は良い。仲良く守化縷として活躍していけるよ」
そんな私達を他人事のように見守っていた骸骨が、やれやれと肩を竦める。
だから、と言葉を付け足して。
「お前さんも離れていた方がいい。この術は一人ずつしか適用できないんでね。近くにいたらお前さんが死んでしまうよ」
え?
「"オン"」
タップの額に手を翳したまま、骸骨の声がなにか言霊のようなものを発する。
それと同時だった。
───ボッ…!
「ッ熱…!」
タップの体全体に、強い熱が帯びたのは。
あまりの熱気に、反射的に腕で顔を覆ってしまう。
「ああぁああぁあ!!!」
「た、タップ…!やめて!殺さないで…!」
タップの体から勢いよく上がる炎。
あまりの熱気に、髪や服が熱風ではたはたと後ろに靡く。
駄目。
やめて。
そんなことしたらタップが死んでしまう…!