第74章 本部襲撃
「君達は、急いでこっちへ」
「へ?なんさっ?」
「兄さん…っ?」
リナリーの肩を抱くようにして足早に何処かへ向かうコムイ。
戸惑いながらもついていくリナリーに、仕方なく後を追う。
なんさ、オレらに別の戦闘の指示でも出そうってのか。
「何処行くんさ、オレ方舟に───」
「此処に入って」
「へっ?」
「きゃっ!?」
居場所を聞こうとすれば、それより早くその部屋の向こう側に急に放り込まれた。
バタン!と閉じる扉に、向こう側からガチャリと鍵をかける音が…ってオイ!
何するんさ!
「ちょっ…兄さん!?」
「何すんだコムイ!出せ!!」
南の所に行かなきゃなんねぇのに!
慌ててリナリーと共に締め切られた扉に齧り付く。
「二人共!」
すると後ろから声が呼びかけてきて、思わず振り返って見えたのは婦長率いる医療班の面々だった。
「婦長!?ドクターや皆も…」
「此処って…」
「此処はクロウリーの病室よ。私達はまだ目覚めてない彼の担当なの」
婦長の言葉に、奥底にあるベッドに目を向ける。
其処には未だ昏睡状態のクロちゃんの姿があった。
そういやあんまり腹の音が酷いから、途中で別部屋に隔離されてたっけ。
此処、医療部屋だったのか。
『ここ医療区域に結界を張って、非戦闘員の避難場所にした。君達も此処にいなさい。神田くんとチャオジーも今捜してる』
「な…っ」
すると締め切られた扉の向こうから聞こえてきたコムイの言葉に、驚き声が上がってしまった。
非戦闘員って…そんな枠組みに入れられて堪るかよ…!
「冗談じゃねぇ!ジジイんとこ行くから出せ!」
『君達は今、武器がないだろう』
「だからさっさと直せっつったんだろーが!研究員増やせ馬鹿!!」
渾身の力で扉を殴っても、元々頑丈に作られているのかビクともしなかった。
避難場所にするくらいさ、きっとこの部屋の造りは他より頑丈なんだろう。
ってそんなこと冷静に考えてる場合じゃねぇからオレ…!