第73章 あくまが来た日
「すみません、元帥。また今度お誘いして下さい」
「なんだ…仕方ねぇな」
「南!ほら早くー」
「うんっ」
深々頭を下げて、呼ぶジョニー達の所に慌てて向かう。
「ふ。残念だったな、クロス」
「あ?…あー…番犬はあいつ一人じゃなかったってことか…」
足早にその場を去ったから、そんなクラウド元帥とクロス元帥の会話は、私の耳には届かなかった。
「───南、なんかクロス元帥に目ぇ付けられてねぇか?」
「目って…でも時々気遣ってくれるんだよね」
「それを目ぇ付けられてるって言うんだよ…」
「そうかな」
そんな気はあまりしないけど…あ、でも良い女になったって褒めてもらえたのは確かだし。
そういう意味では、目をかけてもらってるのかな。
「気を付けねぇとな、ジョニー」
「そうだね。南がクロス元帥の餌食にならないように」
「餌食って。ならないよ」
私が3年後に独り身でいない限りは。
以前、元帥に言われたその言葉を思い出しながら、笑って否定する。
…というか…こんなふうに二人が気遣ってくれるのって、珍しい気がする。
いつもは同期として他男性職員と変わらず扱ってくるのに。
「なんか二人とも優しくない?」
「そうか?普通だろ」
「そうだよ」
「そうかなぁ…そんなふうに気遣ってくれることなんてあったっけ」
前の飲み会でクロス元帥に絡まれた時は、リーバー班長だけが気遣ってくれていた。
他の皆は、気にせず好きに飲んだくれてたし。
「そりゃー…だってなぁ、ジョニー」
「うん。南はオレら科学班の大事な─」
大事な?
「「マスコットだし」」
「………は?」
ぴったり息揃えて向けてきた、思考の斜め上をいくその言葉に思わず足が止まった。
…マスコット?
って何。