第73章 あくまが来た日
「やっと見つけたさっ」
「…ラビ?」
後ろから抱きしめてくるその存在に、顔を上げれば明るい赤髪が見えた。
そっか、今日退院だったもんね。
「退院したんだ。おめでとう」
「ん、長かったー…ほんと。長かった」
「長かったって…ちょっ、苦しい苦しい」
私の頭に頬を擦り寄せて、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくるその腕を軽く叩く。
締まってる締まってる!
「三日ぶりの南なんさ、ちょっと補充。婦長ホントに厳し過ぎだからさー…」
「いや、あれは私達が悪いから」
病室であんなことしちゃいけません。
…というか、思い出させないで。
ちょっと恥ずかしいから。
あの日、私とラビは婦長さんにこっ酷く怒られた。
それはもうこっ酷く。
軽くトラウマになりそうなくらい。
そして私は本当に男性病棟の出禁を喰らってしまって、三日間ラビ達のお見舞いに行けなかった。
「コラ。女性が嫌がってる時はしつこくしないって、前にも言ったでしょっ」
「わ、」
「あ、オイっ」
すると急に強い力で、ベリッと引き離される。
見れば、あの方舟で帰り着いた皆を出迎えた時と同じ。
呆れた顔で私の腕を引いたアレンが、ラビを見ていた。
「大体ラビの所為で、僕も南さんに会えなかったんですから。いい加減何して怒られたか、教えて下さいよ」
「いや、それは…ウン。」
「ア、アレンも退院できてよかったね!」
ジト目でラビに問い質すアレンに、慌てて口を挟む。
言えない。
ラビと不純異性交遊してたと婦長さんに勘違いされたなんて。
絶対、言えない。