第72章 欲しいもの
「…南はさ、自分を過小評価し過ぎなんさ」
握っていた手を引く。
小さな手をオレの胸に当てて。
「"エクソシスト"っていう特別な力があったって、救えない命はあるし…そんな特別な力なんかなくたって、救える命はある」
オレがそうだから。
AKUMAと戦り合える力を持ってたって、守りきれなかった"心"がある。
昔。
オレの不甲斐なさで、伯爵につけ込まれてしまったファインダーのあいつをオレは守れなかった。
精々できたのは"死"という形で自由にしてやることだけ。
そうやって人一人救えなかったオレをロードから救ってくれたのは、特別な力なんてない南だった。
「よく南は"自分はただの人間だから"って言うけどさ…そんな"ただの人間"だから、すげぇんさ」
「…?」
恐る恐る上がった顔が、不思議そうに目で問いかけてくる。
南は正真正銘、なんの能力もない"ただの人間"だ。
AKUMAと戦う術を持たない、一般人の中でも弱い"女性"という部類に入る人。
きっと相手がAKUMAじゃなくたって、下手したら一般人の誰かに殺されても不思議じゃない。
そんな"普通"の人間だからこそ。
「自分の弱いところをちゃんと知って、認めて、その上でオレ達を守ろうとしてくれてるだろ。自分の駄目だと思うところも目を逸らさず見つめて、立ってるだろ」
だからクロス元帥だって、あんなことを南に言ったんだと思う。
立場は違っても、戦う土俵も戦い方も違っても。
それでも南は一緒にオレ達と戦ってくれてる。
弱い自分をただ嘆くんじゃなく、理解しようとして。
自分の力量を知った上で、できることを精一杯やろうとしてる。
それって結構、凄いことだとオレは思う。