第71章 〝おかえり〟と〝ただいま〟
こうして認めてくれる人がいるなら、それだけで。
「…ありがとうございます」
「礼ならまた、酒の酌でも頼む」
「元帥がまた、美味しいワインを飲ませてくれるなら」
つい顔が綻ぶ。
そんな私を見下ろすクロス元帥も、優しい顔をして微笑んでくれた。
「待て待て!なんか良い雰囲気になってんだけど待って!元帥と二人で酒飲みなんて駄目だかんなそれ…!」
「チッ。おいモヤシ、あのエロ親父止めてこい。お前しかイノセンス使えねぇだろが」
「そうしたいのは山々ですが、そんなことで止められないですよ、あの人は…」
そこに響くラビの叫びに、はっとする。
駄目だ、また周りのこと忘れてた…!
というか元帥の言葉が素敵過ぎるんだと思うっ
「ったく、煩ぇな。ケツの青いガキはすっこんでろ。ここからは大人の時間だ」
「何が"大人の時間"さ!リナリーにも手出ししてた癖に!」
「リナリーは言葉だけだろ。それ以上は出さねぇよ。コムイがうるさいしな」
「え、何言葉だけって。南さんにはどこまで手出しする気なんですか師匠ぶっ飛ばしますよ」
「…そいつに変に触れたら叩っ斬るぞ」
「ほお。やれるもんならやってみろガキ共」
「ち、ちょっと待ってちょっと…!」
ニヤニヤと余裕ある笑みを浮かべる元帥に、殺伐とした視線を送るアレン達。
思わず、慌てて静止の言葉をかける。
神田はあのノアの一件があったから、そうやって言ってくれるのはわかるけど…多分大丈夫だから!
元帥、面白がってるだけだから!
というか、
「それより!早く皆医務室に──」
「リナリー!!!」
そこに突如、大きな声が飛んでくる。
はっと顔を向けるリナリー。
「皆も…ッ無事でよかった…!」
バタバタと慌しく駆けてくるのは、真っ白いローズクロスの服を着たその人。
コムイ・リー室長。