第71章 〝おかえり〟と〝ただいま〟
「うん。ただいま、南さん」
「ふふ、なんだか帰ってきたって気がするわね」
「そうだな」
「うんうん。ほらユーくんも、ちゃんと言わなきゃ。"ただいま"って」
「…つか教団に戻った途端にその呼び方になんの、やめて下さい」
皆ボロボロの姿だったけど。
リナリーやミランダさんやマリやティエドール元帥や。
皆が浮かべてくれたその笑顔に、胸が温かくなる。
神田は相変わらずの仏頂面だったけど。
それでも、怪我を軽視はできないけど五体満足でこうして帰ってきてくれた。
もう今はそれだけで充分だ。
「ところで南さん……なんですかその格好」
「え?」
アレンの銀灰色の目が、どこか遠慮がちに私の体を見てくる。
格好って───…あっ
「あ、いや…っさっき子供の姿から戻ったばかりで、服がそのままだったから…っ」
慌てて白衣の前を託し合わせて、取り繕うように笑う。
すっかり忘れてた、今の自分の姿。
これはラビとのハグとは別の意味で恥ずかしい。
「お前まだ餓鬼のままでいたのかよ」
「色々こっちも忙しかったから、すぐには戻れなかったんです」
呆れたように見てくる神田に目を向けて、でも自然と私の顔には笑顔が浮かんでいた。
見た目は酷い有り様だけど、そんな神田は任務で一緒だった時の神田と変わらなかったから。
「ありがとう。神田も…生きててくれて」
「言っただろ。俺は早々死なねぇって」
「うん、有言実行だね」
「それよりさっきまで餓鬼のままだったんだろ、お前。…変に一人で彷徨かなかっただろうな」
「大丈夫、一人で外出はしてないよ。またあんなことになったら、神田に怒られそうだし」
苦笑混じりに神田と言葉を交わす。
また変な輩に捕まったりなんかしたら、神田のあの強烈なデコピンを喰らいそうな気がする。
すると不意に、私と神田の間にずいっと二つの顔が──
「可笑しい」
「なんですかこれ」
間に割り込んだのは、ラビとアレンの顔。
その表情は二人共、どこか変な顔をしていた。