第71章 〝おかえり〟と〝ただいま〟
「バクさん、そんな退け腰にならなくても───」
最初に姿を現したその人物は、後方を苦笑混じりに見ながらそんな言葉を投げかけている。
流れるような動作でこちらに振り返って…目が合った。
「………」
お互いの間で沈黙ができる。
私は唖然と、言葉が出なかっただけなんだけど。
「…南さん?」
目を丸くしたその人が私の名前を紡ぐ。
ああ、やっぱり。
「………アレン」
その時になってやっと、私はその人の名を紡ぐことができた。
「どうして此処に…っあ!コムイさんに聞いて、出迎えに来てくれたんですかっ?」
ぱっと笑みを浮かべたアレンが、小走りに駆け寄る。
「ま、待てウォーカー!先に行くな!」
後から焦ったような声がして、姿を現したのはバク支部長。
でも私の目はそこには向かなかった。
だって。
「アレン…」
「はい?」
笑顔で目の前に寄るその少年の姿に、僅かに息を呑んだから。
ボロボロだった。
左肩から胸と左腕が見える程、大きく団服は破けていて肌を露出している。
その見える肌にも傷があちこち見えて、顔も同様に擦り傷だらけだった。
怪我が酷いことはコムイ室長から聞いて知っていたけど、ここまでだったなんて。
思わず顔が歪みそうになる。