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科学班の恋【D.Gray-man】

第71章 〝おかえり〟と〝ただいま〟



「───っは…はぁ…つ、着いた…ッ!」



ひたすら足を止めずに走り続けて、やがて目的地に辿り着いた時にはぜぃぜぃと息が上がっていた。
ついでにギシギシと体のあちこちが軋む。

だって転びましたもん。
あの後、二回も。

久しぶりに感じる目線の高さはどこか違和感があって、長くなった手足は不慣れで上手く動かせない。
こうして立っているだけでもふらつく体を、なんとか壁に手をついて支えた。



「まだ、着いてないのかな…」



上がった息のまま辺りを見渡す。
人影が一つもないその大きな広間は、いつもと変わらない風景。
第三広間と呼ばれている此処は、人通りの少ない通路の奥にある。
普段はあまり使われない場所。
いきなりアレン達が帰ってきて教団の皆を驚かせないように、コムイ室長は恐らく此処を選んだんだろう。



「ふー…っ………。」



なんとか深く深呼吸をして、乱れた息を整える。
ついでに自分の体も見下ろして……うん。
流石にこんな格好で出迎えるのは、恥ずかしいな…リーバー班長の白衣、借りておこう。
今更ながら羞恥心が湧いて大きな白衣にいそいそと袖を通していた、その時。






───ポォン…






まるでピアノか何かの鍵盤を叩くような、そんな音が耳に届いた。



「……え?」



それと同時に、広間の中央に淡い光が灯る。
最初は小さな光だったそれも、段々と大きくなるにつれて強さを増していく。
その光はまるで何かを形作るかのように、其処に姿を現した。

なんて言ったらいいんだろう。

クリスタルのような結晶のような、そんな薄い板のような光が広間の中央に浮かぶ。
【ー3ー】と書かれた数字が、その板の一つに浮かび上がった。

上手く言えないけど、どこか神秘的にも見える不思議な光の形。
思わず息を呑んで見上げることしかできないでいる私の目に、映ったのは。






「こっちですよ、ついてきて下さい」






その薄い光の壁の向こうから、ヴン、と微かな音を立てて膜を通るかのように姿を現した───…



「……ぁ」



白髪のエクソシスト。

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