第71章 〝おかえり〟と〝ただいま〟
「南くんっ!!」
「すみません!!後で処罰でもなんでも受けます!」
こんなことでコムイ室長は処罰なんてしないだろうけど。
とりあえず追いかけてくる声に背を向けたまま謝罪して、迷わず司令室を飛び出した私の体は駆け出していた。
第三広間って、普段使われてない広間だったよね…!
確か───
ズダンッ!
「…~っ!」
瞬間。
上手く動かない体に、覚束無い足は思いっきり羽織っていた班長の白衣を踏みつけて、そのまま顔面から転倒。
顔面強打。
顔から落ちた。
それはもう、みっともなく。
こ、これは痛い…!
「ぃっつぅう…!」
強打した顔面を押さえて、切ない悲鳴を上げる。
これは班長の白衣が悪い訳じゃないな、うん。
身長差はあるんだからこうなるのは目に見えてたし。
これは回避できない私の体が悪い。
「ッ全くもう…動けっ!」
薬の効果もあって仕方ないことだとは思うけど、でも今はそんな自分の体にさえも苛立つ。
そのまま鞭打つように渇を飛ばして、急いで体を起こした。
今は一刻も早く第三広間に行きたい。
「っは…!」
なんとかグラつく体を、必死に両足を前後に駆けるように動かすことで保つ。
また踏んで転ばないよう、白衣は脇に丸めて抱えて。
傍から見れば変な光景なんだろう。
こんなみっともない格好でバタバタと素足で走る女性なんか。
すれ違う研究員の人達の視線を感じたけど、それでも構ってられなかった。
早く、早く。
そう、心が体を急かして。