第71章 〝おかえり〟と〝ただいま〟
「じゃあ皆にも知らせないと。とりあえず一度切るから。皆をこっちに迎えてから、改めてまた話を…うん、そうだね。うん」
必要なことは話し終えたのか。
待っていると、そうかからずカチャンと室長は受話器を置いた。
それと同時に私は口を開いていた。
「室長!皆、帰ってくるんですか…っ」
「うん。皆無事に戻ってくるよ。アレンくんの時と同じで方舟を使うみたいだから、こっちにすぐ向かうって」
胸が高鳴る。
皆ってことは…アレンもリナリーも神田もミランダさんもクロウリーもマリもブックマンも。
そしてきっとラビだって。
帰ってくるんだ。
「とりあえず皆に知らせて、出迎えないとね。結構怪我も酷いらしいから、医療班に入院の準備もさせないと」
「え…」
怪我…酷いんだ。
思わず胸元で拳を握る。
わかってたけど。
覚悟はしてたけど。
実際に聞くと、不安が浮かぶ。
例え命が無事だったからって…怪我を軽視していい訳じゃない。
皆、大丈夫なのかな…。
「リーバーくんが戻ってきたら、皆に連絡を回してもらうよ。南くんはまだ体が本調子じゃないだろうし、とりあえず此処で待機ね」
「っ…」
待機なんて。
じっとしていられない。
「もしもし。あ、婦長いる?」
そんな私を他所に、再び受話器を手に医療班に連絡を入れる室長。
ぎゅっと拳を握りしめる。
───そうだ、場所。
はっと思い出す。
確か第三広間って、室長は言っていた。
…きっと其処に方舟を繋げるんだ。
すぐに向かうって言ってたなら、方舟は一瞬で移動できる乗り物らしいから…きっと本当にすぐ帰ってくる。
「元帥二名を入れたエクソシストが皆、戻ってくるんだ。うん、そうそう」
「………」
いつもいつも、私が皆の情報を知った時は既に"過去"のことになっていた。
いつもいつも、知った時には既に物事は終わっていて、その身を案じる暇もない。
いつもいつも、置いてけぼり。
それはもう───…嫌だ。
「ッ…すみません、室長っ」
「だからすぐ手当てできるよう───…えっ?南くんっ!?」
気が付くと、体は勝手に動いていた。