第71章 〝おかえり〟と〝ただいま〟
「すみません、班長…」
「ああいや、南が悪い訳じゃない。早く戻りたがった気持ちもわかるしな。ほら、これ」
「…ありがとうございます」
リーバー班長の脱いだ大きな白衣を肩にかけられて、頭を下げる。
うわ…班長とは身長差あるし男物だから…おっきいな、白衣。
「じゃあ俺、南の服取ってきますんで───」
そう班長が室長に声をかけた時だった。
ジリリリ!
けたたましい音を立てて、机の電話機が鳴ったのは。
「はいはーい、誰で…あれ、バクちゃん?」
受話器を手に取りながら、コムイ室長の目はリーバー班長を見てコクリと頷く。
それを了承と受け取った班長が、司令室のドアに向かった。
「すぐ戻るから」
「はい。すみません」
司令室を出ていく班長に頭だけ下げて見送る。
「うん?何、よくわからないから落ち着いて話してくれるかな」
残された私は目の前の机でバク支部長と話すコムイ室長を、静かに見守ることにした。
少し耳から受話器を話して会話しているところ、電話越しの声は大声でも出してるらしい。
バク支部長、またコムイ室長にリナリー関連で喧嘩でも吹っ掛けてるんじゃ…
「………え?」
不意にコムイ室長の呆れていた表情が止まる。
眼鏡の奥の切れ目が驚きで見開くのが、私にも見えた。
なんだろう?
「それ本当かいッ?」
「!」
ガタッと急に席を立つ室長に、思わず目を丸くする。
え、何本当に。
「うん、うんっわかった。それなら…第三広間にお願いできるかなッ…え?アレンくん?なんでそこでアレンくんが…え?」
え。
今…アレンって言った?