第71章 〝おかえり〟と〝ただいま〟
「けほっ…何、急に…っ」
視界を覆う白い煙に、思わずけほけほと咳を漏らす。
この煙、私の体から…っ?
「なんだい、リーバーくん。僕は変な解毒剤は作ってないよ?ほらよく見て」
不服そうにプンプンと室長が指差したのは、ソファに座っている私。
咳込む口に、思わず手を当てて。
「…あ。」
その手が、小さな子供の掌じゃないことに気付いた。
「も…戻ってる…っ?」
思わずぺたぺたと自分の顔を触る。
触っただけじゃわからないけど、でも。
明らかに高くなった視界に、声も拙さのないはっきりとした口調。
間違いない。
きっと元に戻ったんだ…!
「ありがとうございま──…っ?」
喜び勇んで立ち上がると、不意にぐらりとバランスを失って体が傾いた。
「わ、と…ッ」
思わずぽすりと、再びソファに座り込む。
「ああ、ずっと幼児体型でいたしね。まだその大きさに体がついていってないだけだよ。一日慣らせば、またいつものように動けるようになるから」
「そう、ですか…」
ならいいんだけど…。
「とにかく、ありがとうございますっ」
「いえいえ♪よかったよ」
「いや、よくないです」
にこにこと笑う室長とは対照的に、きっぱりと眉間に皺寄せて首を振ったのはリーバー班長。
え、なんで?
「喜ぶのはいいが、その前に自分の身形を気にしろ。お前は」
呆れ気味に溜息をついて、班長が私を制す。
身形って───…あ。
「………」
見下ろして気付いた。
元々子供服を着てたから、少しキツくなったその服は今の私にはアンバランスだった。
ブルマ並みに短い短パンに、おへそが見えるミニTシャツのような恰好。
こ…これは…恥ずかしい…。
「服を着替えてから飲むべきだったな…替えの服持ってきてやるから、南は此処にいろ」
「え。でも…」
「まだ上手く体も動かせないんだし。大体そんな姿で歩き回るのは、色々と駄目だろ」
……ですよね、はい。
見苦しいものお見せしちゃってすみません。