第70章 その言葉を交わすために
───カラン…ッ
自分の手から、イノセンスが離れる感覚。
激しく周りを渦巻いていた炎が止まる前に、何かに体を包み込まれた。
なんだ、これ…?
それがなんなのかわからないまま、視界は真っ暗になって。
───静寂。
「…言ったでしょ、ラビ」
暗闇の中で聞こえたのは…アレンの声?
「南さんを泣かせたら…僕が貰いますよって」
ああ、そういやそんなこと前に───…ってなんで今その話?
「ちゃんと皆で帰らないと…南さん、泣きますよ」
…それはわかんねぇさ、アレン。
南のことだから、きっと涙は周りに見せない。
もしかしたら…一人でこっそり泣くかもしんねぇけど。
………。
………あ、それ。
案外悪くないかもしれない。
悲しむ涙は見たくないけど、オレの弔いにそんな綺麗なもんを添えてもらえるなら。
オレも"ここ"で生きた意味が…きっとできる。
「ふーん。わかりました、いいんですね僕が貰っても。ありがとうございます、ちゃんと大事に頂きます」
え。
い、いや…ちょっと待って。
大事に頂くって何、頂くって。
え、何それまさかナニ?
まさかのナニ!?
つかそんな約束、ハナからオレ承諾してねぇからな!?
「僕の誕生日限定にしておこうと思ってたけど、撤回します。あの時の南さん、顔赤くしてて可愛かったなー。柔らかくって温かくって」
はッ!?
ちょっ…聞き捨てならねぇんだけどそれ!?
柔らかいって何!?
どこ触ったんだよアレン!
羨まし…じゃなくて南に変なことしてねぇよな!?
「大体センチメンタルとかキャラじゃないでしょ。そんなメソメソしてる人に南さんは任せられませんから」
って今度はオレの人格全否定かよッ。
オレだってセンチになる時あんだけど!
それよりさっきの話を詳しく───
がしっ
「……へ?」
腕を掴まれる感覚。
………えっと?