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科学班の恋【D.Gray-man】

第69章 夢世界



───バシャ…ッ



水の中に倒れ込む。
力はもうどこも入らなくて、体が熱く燃やされていく感覚だけが高まる。
我ながら火判の威力凄ぇな…流石オレ。






「…なんでさ"ラビ"…49番目の"オレ"…」






近くでパシャリと、水を踏む音がする。
倒れたまま目線だけ向ければ、傍に立つもう一人の"オレ"がいた。



「お前は"オレ"のはずなのに…"ラビ"になる前の…48番目までの"オレ"とどうして同じじゃないんだ」



どこか縋るように呟くその顔は、さっきまでの皮肉な笑みも驚愕の表情も浮かべていなかった。
暗く、陰った顔。



「どうして48番目までの"オレ"と違っていく…」



そいつの体が、どんどんと小さくなっていく。



「どうして49番目の"オレ"はこんなに苦しいんだ」



どんどん縮む背丈に、比例してどんどん高くなっていく声。
身に付けた眼帯やピアスは変わらなくても、その顔立ちは明らかに幼く変わっていった。

…嗚呼これ、ガキの頃のオレか。



「どうして…ッブックマンになるのが嫌になったのか"ラビ"!?」



小さな子供の姿をした"オレ"が声を張り上げる。



「仮初の仲間の為に戦うことを選ぶのっ?人間なんて戦ばかり起こす愚かな種族だ…ッ」



張り詰めたその顔から飛ぶのは、目に溜まった透明な滴。
…ガキみたいに泣くんじゃねぇさ。



「そうでしょ…!そう割り切ってないとしんどいじゃないか!"オレ"にはブックマン一族の責任があるんだ!!」



……嗚呼、やっぱ。






"手が届かない歯痒さってやつ?…しんどいよな、それ"






南はすげぇな。



こうやってガキのオレがしんどいことに目を背けても。
南はそういうもんと向き合って、オレ達を迎えてくれていた。



逃げ出すことは簡単で。
向き合うことは難しくて。
それでも自分が困難な道を選んで。

そうやって、オレとも向き合ってくれていた。






……やっぱ…譲りたくねぇな…。

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