第69章 夢世界
「まぁ、何が"普通"で何が"普通"じゃないかなんて、人それぞれだけど…私は嫌いじゃないよ。ラビの笑顔」
「へ?」
「ラビが笑ってくれるから、場が和むことだってよくあるし。作り出せるその雰囲気や空気って、ラビだからできることでしょ」
「………」
「だから"普通"であってもなくても。どっちもそれはラビのものなんだよ。私は嫌いじゃない」
「…でもそれ、好きでもないってことさ?」
「…そうじゃないけど…」
「けど?」
「………」
「……もしかして好きって言うの恥ずか」
「嫌いじゃないんです、はい!」
そうやって、南の隣で素でいられるオレと。
そうやって、まだ周りに"仮面"を被ってるオレと。
どっちのオレもオレだって認めて、受け入れてくれた南。
見かけによらず懐でかいんさなー、なんて思いながら…心のどっかで、あったかいもんを感じていた。
気付けばその姿を目で追うようになって。
気付けばその姿を探すようになって。
気付けば、オレは南に恋していた。
きっかけなんてない。
気付いたら、その存在にどうしようもなく惹かれてたんだ。
"ラビ"
例え偽名であっても、オレの名前を呼んでくれる南の声は"オレ自身"を呼んでくれているようで。
とても心地良いものだった。