第69章 夢世界
「もぐ…思ったんだけどさ。書庫室で飲食とか普通に駄目なんじゃ…もぐもぐ」
「南さーん、台詞と行動が一致してねぇけどー?じゃあその差し入れ、オレが食っていい?」
「もぐもぐもぐ!ご馳走様でした!」
それから、その後ろ髪引かれるままに南を書庫室で見かければ声をかけるようになった。
「これ、この間言ってた専門書。どうぞ」
「お、さんきゅー…ってなんさ、このびっしり付いた付箋」
「仕事で使ってたからね。外しちゃ駄目だよ」
「うへー…受験生かよ。流石仕事中毒者」
「…それ褒めてんの?」
あの笑顔を見せてくれた日から、南もオレとよく話をしてくれるようになって。
あの笑顔も、当たり前に見せてくれるようになった。
「でもこの髪飾り、どういう時に付けたらいいんだろう…」
「普通に日常で付けたらいんじゃね?」
「…科学班の皆に見られたら笑われそう…」
「なんで笑われるんさ…南だって女なんだし、着飾ったって変じゃねぇのに」
「………」
「南さん、なんか顔赤いさー」
「う、煩いな」
オレの真意に少なからず触れたかもしれないのに、何も聞かずに傍にいてくれる南の隣は居心地がよくて。
一か月、半年、一年と一緒に過ごす日々が経つにつれて。
オレは南の隣で自然に笑えていることに気付いた。