第69章 夢世界
距離を取ってくる人物と、敢えてその距離を詰める必要はない。
ユウみたいに誰にでも距離置く奴なら、遠慮なく絡んでいけるけど。
南はどうやらオレだけに対して、距離を置いてたみたいだったから。
それなら当たり障りなく見て見ぬフリをする方がいい。
オレは"傍観者"でいなくちゃならないから。
だからその小さな取っ掛かりは、特に気にせず放っておいた。
オレはブックマンJr.───"ブックマン次期後継者"。
どんなに"仲間"としてその場に入り込んだって、結局は相容れられない。
だから"仮面"を貼り付けて愛想よく取り繕った。
そうやって生きる方が楽だから。
"本当に、そう思ってる?"
その声はすんなりと、オレの心を揺さぶった。
書庫室で偶然見かけた、南の姿。
女一人で大量の本を直してたから、見兼ねて声をかけた。
ジョニー達には当たり前に見せる笑顔を、いつもオレの前では見せはしない。
だからか、なんとなく見てみたいかなーって思ったから。
"同じ教団の仲間なんだし、仲良くしよーさ"
安易な気持ちで、そう声をかけた。
そんなオレに問いかけてきた南の言葉は、すんなりと"仮面"のオレを見透かすように突いてきた。
言葉はすぐには出てこなかった。
取り繕うようにも笑えなかった。
…多分、ガラにもなく素の表情が出ちまったんだろう。
「ごめん。なんでもない」
そんなオレに、反応を返すより早く南は視線を逸らすと謝罪した。
それ以上突っ込ませないかのように。