第69章 夢世界
"ラビ"は49番目の偽名。
偽名の数だけ、戦いは観てきた。
"裏歴史"とは語り継がれる人の歴史から、除外された史実。
"誰も知らない事実を知れる"
それだけでオレは"ブックマン"になることを受け入れた。
───だが、
「何処へ行っても戦、戦、戦。人間が馬鹿だってことはよくわかったさ」
「…ラビ。波風立たんようにせえよ」
「へいへい、当分の寝屋だしね。いつもみたいにヘラッとして"仲良く"なるさー」
"悪魔との大戦"
今まで観た中で一番大きな戦。
兵士になって記録に入ったのは初めてだった。
「体のサイズ?別に、んなの適当でいいけど」
「ダメダメ!ちゃんと体に合った団服の方が防御率上がるんだよっ!な、タップ!」
「そうそう。それにやっぱ動き易いしさー。AKUMAとの戦闘でもきっと役に立つから」
「話をするのはいいが机に乗るなジョニーッ行儀悪いぞ!」
「…なんか皆、目ぇキラキラしてねぇさ?」
「皆、仲間になったラビを守りたいんだよ。測ろ?」
オレの方から歩み寄らずとも、向こうから歩み寄ってきてくれた。
ジョニーやタップや、リーバーやリナリー。
他の教団連中も、皆オレのことを新しいエクソシストの"仲間"だと受け入れてくれた。
「ブーツのデザインは南が得意だよな、ラビに合うの考えてやってよ」
「え?…ああ、うん」
一人だけ除いて。
人間観察は身に付いたもんだったから、関わってくる連中のことはよく見ているつもりだった。
だけどいつまでも、よくわからない人物が一人だけいた。
椎名 南
同じ科学班のジョニー達とつるんで楽しそうに話している姿は、よく見かけていた。
なのにジョニーやタップとよく絡んでいたオレとは、自然と話すことがあまりなくて。
自然とそれは"不自然"だった。
───まぁ、いいか
馴れ合わない人間なんて一人や二人いるもんだ。
こんなに大人数の人間が所属する機関なら尚更。
きっと南はオレみたいなタイプが苦手なんだろう。
"オレ、ラビね。よろしくー"
"…よろしく"
出会った初日も、胡散臭そうな者を見るような目してたし。