第11章 ぬくもり
強張っていた小さな体から力が抜ける。
それを確認して、掴んでいた腕をそっと放した。
「よし。じゃあ戻って残りの仕事だ。お前に手間取られた分、手伝ってもらうからな」
「え?…あの数式の解答、ですか?」
「勿論」
「ええっ!む、無理ですよ…っ私じゃちんぷんかんぷんですから…!」
「ああ、そこは大丈夫。南の頭でもわかることを、やらせるから」
「そんなものあるんですか…っ」
ゆっくりと研究室に戻る道を進む。
慌ててついて来る南にぎこちなさは残るものの、先程の暗さは消えていた。
よかった。
内心ほっとしながら、けれど未だに俺の心の奥はざわついたままだった。
なんとなく。
そう、なんとなくだけど。
南が語らない理由に、あのラビが関わっているような気がしたから。
だから今ここで南を手放したくはなかった。
南が抱えている問題だから、言いたくないことに無理に首を突っ込もうとは思わない。
だけどこんな状態の南を一人にはさせたくない。
一人にさせるくらいなら
俺が傍に、ついていてやりたい。