第67章 出会い
「まーた、書庫室でサービス残業さー?」
「まーた、絡みに来たんですかー。邪魔なんであっち行って下さい」
「酷っ!あーあ、折角南の為に差し入れ持ってきてやったのに」
「嘘ですありがとうございます!流石ラビ様々!」
「…掌返しが早過ぎじゃね」
仕事で書庫室を利用することは多かったから、其処で給料にもならない残業をしているとよくラビが声をかけてくるようになった。
私も私で、ラビに壁なんて作らず接しようと思ったから。
そうやって素で向き合えば、すぐに距離は縮まった。
元々ノリ良く誰とでも合わせられる性格のラビだったから、私とも相性は悪くなくて、一緒にいて楽な存在になった。
「へーえ。よくこんな話知ってたさね」
「だってそれ、私の仕事分野だし。それしか詳しい話はできないけど…あ、今度その専門書貸そうか?」
「マジ!?読みたいッ」
人懐っこい笑みで砕けて笑うラビの顔が、いつの間にか偽物みたいに見えなくなって。
「南っただいまさー」
「おかえり…って、何これ?」
「任務先で見つけた!この和柄、なんか日本っぽくね?」
「珍しいね、こんな和風の髪飾り」
「やるさ、南に。普段女らしい恰好してねんだし、偶にはそういうもんつけろよ」
「女らしくなくて悪かったですね。…でも、ありがと」
ラビの隣にいることが、当たり前に居心地よくなって。
「オレさ、南の隣だとフツーに笑えてる気がする」
「何急に」
「…南があの時、笑ってくれたお陰かもしんねぇさ」
「あの時?何それ、いつの話?」
「ん。なんでもねー」
「…自分から話ぶっ込んどいて、言い逃げってどゆこと」
"ラビ"という存在は、きっと私の中で自然と大きなものになっていた。
だからあんな、衝動的なキスをされても思いを色々ぶつけられても…それでもラビを失いたくないって思えたんじゃないのかな。
…きっと。