第67章 出会い
「あ、ありがとう…」
「どう致しまして。てか一人でこんなに借りたんさ?」
「まぁ…ある意味」
「?…あ、わかった。科学班の連中で借りたやつだろ、これ全部」
曖昧に答えれば、不思議そうな目が向く。
次に足元に置かれた沢山の資料を見渡して、すぐにピンときたように手を叩いた。
ノリの良い性格だけど、頭の回転も速いってジョニーが言ってたな…そういえば。
「うん、そんなところ」
「なんで南一人で片付けてるんさ?」
「……罰ゲーム的な」
「罰ゲーム?」
お酒の勢いで賭け事して負けたなんて、なんだか恥ずかしくて言い難そうに呟けば、きょとんとその目を丸くして。
「ぶっはッ」
ラビは吹き出した。
「ちょ、なんで笑うの」
「いや…っ南ってそういう遊びとかするんさなーって」
「何それ。私をなんだと思ってんの」
「だってオレ、南のことなんも知らねーし。ジョニーとかとつるんでるのは知ってるけどさ。あんま話したことねぇよな」
下から梯子を上がってきたラビが、私の下からでも易々と手を伸ばして棚に本を戻す。
軽い身のこなしですたんっと飛び降りると、ニパッと笑って見上げられた。
「同じ教団の仲間なんだし、仲良くしよーさ」
「………」
「南?」
「……本当に?」
「へ?」
気付いたら、無意識でそんなことを口にしていた。
「本当に、そう思ってる?」
投げかけた言葉にラビの返事はなかった。
僅かに驚いたように、丸くなる翡翠色の目。
「ごめん。なんでもない」
しまった、変なことを言ってしまった。
人との間に、波風を立てるのは好きじゃない。
ラビが何か言葉を発する前に、咄嗟に先に謝る。
そうして、それをなかったことにした。