第67章 出会い
「…はぁ」
書庫室の本棚の奥で一人、こっそりと溜息。
両手に抱えた沢山の資料をよろよろと運ぶ。
全く…なんで私がタップ達の借りた資料まで、戻してやらなきゃいけないのか…。
「…ジョニーにチェスで挑んだ私が阿呆だったな…」
昨夜、飲み会で酔った勢いでジョニーとチェスで賭け事をした。
結果、見事に惨敗。
研究室にあった大量の借りた資料は全部、私が片付ける羽目になった。
まぁ…ついでに調べものもしたかったし。
書庫室に用事はあったからいいんだけど…。
「…重い」
一冊だけで充分大きく厚い本を、なんとか抱えて梯子を上る。
直す棚の位置はちょっと離れてるから、必死にそこに腕を伸ばす。
「もう、ちょっと…っ」
ぷるぷる震える腕に、必死に伸ばした手は棚の中に本を──
「あっ」
棚に置くことはできたんだけど。
ぐらりと重さで傾いた本が、重力に従って下に落ちる。
次には大きな音を立てるだろう、その衝撃を予想して。
とすっ
耳に聞こえたのは、酷く呆気ないキャッチ音。
「あっぶね」
「!」
誰もいなかったはずのそこから聞こえた声に驚いて梯子から見下ろせば、映ったのは明るく赤く栄える髪。
「セーフ、さな」
片手で重い本を手にして、愛想よく笑うラビが其処にいた。