第67章 出会い
"こんな時に入団者なんて…"
"まぁ、相手が相手だからな"
"え?どういう意味ですか?"
"後で説明してやるよ"
そう意味深に笑った班長に連れられて、見えたのは大広間が見渡せる通路に立つコムイ室長の背中。
そして、その前に立つ二人の人影。
高い背丈と低い背丈はアンバランスに、凸凹な組み合わせ。
何処も腐臭と消毒液の臭いが入り混じっていた、あの日に私は。
"貴方方がブックマンの血筋の方ですね"
"ああ"
"ようこそ、黒の教団へ"
ラビに出会った。
"科学班室長のコムイ・リーです"
"儂が現ブックマンを名乗る者だ"
握手を交わすコムイ室長とブックマンの後ろ。
其処で赤毛にバンダナに眼帯という、個性的で目を惹く姿をしていた彼はじっと大広間を見下ろしていた。
"…負け戦だねぇ…"
ぼそりと一言。
大量の棺を見ながら呟いたその声が、初めて私が聞いたラビの言葉だった。
どこか淡々とした言葉で、まるで他人事のような表情。
正直良い気はしなかったけど、まだ入団したばかりだし身近に思えなくても仕方ないのかな、とその時は流した。
"ここからは私が本部内を案内させて頂きますね。科学班の椎名南といいます"
"ああ、宜しく頼む"
"………"
"おい、ラビ。何ボサッとしとる"
"へ?いや…あの子、超美人だなって"
"何阿呆なことをぬかしとるか!"
"イデッ!?"
笑顔で案内しようと挨拶すれば、ラビはどこか驚いたような顔で変わらず広間を見下ろし続けていて応答しない。
ブックマンに咎められてやっと顔を向けたかと思えば、棺を前に泣いていたリナリーを指差してそんなことを口にした。
瞬間、ブックマンの容赦ない鉄拳が落ちてたけど。
私も同様にあの時は呆れたかな。
チャラい変な名前の青年。
第一印象は、そんな感じ。
"オレ、ラビね。よろしくー"
"…よろしく"
こっちを向いたかと思えば、切り替えるようにニパッと人懐っこい笑みを浮かべて片手を挙げてくる。
明らかに作り変えたその顔に、更に胡散臭い奴。というのが第一印象に加わった。