第67章 出会い
「おかえり、リーバーくん。南くん。お勤めご苦労様」
司令室でいつものように迎えてくれたコムイ室長は笑ってくれたけど、その笑顔にいつもの活気さはなかった。
そうだよね…あの大量の棺を見てしまったら。
「俺が報告を済ませるから。お前はもう戻って休め」
「でも…」
「その体じゃ負担も大きいだろ。今は休んでろ」
「…はい。すみません、コムイしつちょう、リーバーはんちょう…しつれいします」
どこか有無言わさぬ班長の気遣いに、今は素直に甘えることにした。
二人に頭を下げて、一人司令室を出る。
…今この教団内にエクソシストは一人もいない。
ラビのいるクロス部隊も、今現在は任務で中国に向かっていると出迎えてくれた警護班の人から聞いた。
カツン、カツン、
小さな足音が響く。
再びやって来た大広間で、もう泣き言を漏らしてる人はいなかった。
つんと僅かに鼻を突く腐臭。
棺に縋って泣く人達の声。
伯爵に殺られたのか、AKUMAに殺られたのか。
……そういえばこの光景、前にも見たことがある。
あれは確か───…二年程前だったかな…。
"南、ちょっと手を借りていいか"
"なんですか?リーバー班長"
"入団者が二名いてな。葬儀で人手が回せないから、本部内の案内を頼みたいんだ"
"わかりました"
伯爵との戦いで、エクソシストからもファインダーからも沢山の死者が出たあの日。
広間で百以上の大量の棺を前に、簡易的な葬儀だけ行われていた。
棺に泣いて縋る人達の合間を通り過ぎて、班長に連れられて向かったのはその上にある吹き抜けの通路。
一気に人手を失ってほとんど機能していない教団に、私は悲しみに暮れる暇もない程に仕事に追われていた。
その時宛がわれたそれも、人手不足故の仕事の一つだった。