第67章 出会い
行きに比べて帰りは特に問題もなく帰れた。
だけど行きに比べて、過ぎ去る時間は酷く遅く感じた。
早く、教団に帰り着きたい。
その気持ちだけが心を急かして。
早く、早く。
───カツン…
広い教団の大広間。
急いで帰り着いた私達を待っていたのは、絶句する光景だった。
「はんちょう…これ…」
「…ああ。今回殉死したエクソシストも含めた、全員の遺体だろう」
目の前に広がるのは、大広間に並べられた夥しい数の棺。
見たところ…百以上はある。
その大半はきっと、ファインダーの人達。
「全然駄目じゃないか…神の使徒じゃないのかよ…おい…」
「死んでんじゃねーよ…」
あちこちから棺に縋る人々の泣き声が聞こえる中。
そこに混じる悲鳴に似た嘆き。
「エクソシストが敵わなきゃ、どうしようもないじゃないか…」
「俺達どうなっちまうんだよ…」
「伯爵に…殺されるのか…?」
「黙れよ」
めそめそと響くその嘆きを止めたのは、私のすぐ傍に立つその人の言葉だった。
「命懸けて帰ってきた仲間の前で、泣き言ほざいてんじゃねぇよ」
嘆く研究員の人達に静かに向けた班長の声は低く、その視線は鋭い。
威圧された団員達が押し黙る中、私はその人の指先に手を伸ばした。
「…はんちょう」
自分に厳しい人だから。
それだけ、他人にも厳しい人。
こうして見せていないけれど、その下にある素顔は本当は苦痛に歪んでる。
エクソシストやファインダーの死に触れて、一人で隠すように顔を歪ませていたのを、私は知っているから。
「コムイしつちょうのところにいきましょう」
「……ああ、そうだな」
その大きな指をそっと握れば、見下ろした顔は力なく僅かに頷いて。
そっと、その手を握り返してくれた。