第66章 アジア支部
「お前らそうやってると、上司と部下には見えねぇよな~」
そんな私達をしげしげと見ながら、ジジさんが笑いかけてくる。
「そうか?」
「ああ。前はお前が南の番犬みたいだったけどよ。今は真逆だ」
「ばんけん?」
「リーバーを仕事から守る小型犬って感じだな」
「わ…っ」
わしわしとジジさんに頭を撫でられて、複雑な気分になる。
小型犬って…それ、キャンキャン騒いで煩いってことなのかな。
でも班長にはとにかく休んでて欲しいし…偶には何もせずにゆっくりしていて欲しい。
「あ!南さんいたっ」
「おお、今日も紛うことなき子供姿だなー」
「あ。李佳やめ」
「ぅわっ?」
そんな中、不意に後ろから声がかかったかと思えば、一気に視線がぐんっと上がる。
後ろから両脇に入った手が易々と体を持ち上げて、その高さに慌てた。
これは…っ
「よう、」
「りけいくん…っきゅうにもちあげたらビビるから!」
「なんか縫いぐるみ感覚で、つい」
縫いぐるみじゃないから!
私、立派に人間だから!
顔だけどうにか振り返れば、其処にはここ最近慣れ親しんだ顔がいた。
アジア支部科学班見習いである、李佳君。
その横には同じく見習いであるシィフ君と蝋花さんの姿もある。
出会って早々、三人はコムイ室長の薬で小さくなったこの体に興味を持って、結果よく絡まれるようになった。
探求心や好奇心が強いというか…科学班としては、必要なものだとは思うけど。
「時間経過で切れない薬ってのも凄いよな。どうしたらこんな薬作れるんだか」
「流石、教団本部の室長さんだよね」
「というか李佳、南さん下ろしてやったら。驚いてるでしょ」
「えー、いいだろこれくらい。なー、南ちゃん」
「わたしはシィフくんにさんせいです」
「冷たっ」
にこにこと満面の笑みを寄せてくる李佳君を、きっぱりと真顔で否定する。
こうやって出会えばあちこち体を触ってくるから、私には傍迷惑でしかない。
薬に興味を持つのは大いに結構だけど、こんな薬役に立たないからね。
不便なだけです。