第66章 アジア支部
───カチャ…
「はんちょう…?」
早々と任務に発った神田を見送った後、ウォンさんに聞いてリーバー班長が借りた部屋に向かった。
背伸びして回したドアノブに、呆気なく開く扉。
でも呼びかけても室内から返事はない。
寝てるのかな…?
「…すー…」
あ、やっぱり。
予想は当たって、薄暗い部屋に踏み込めば、ベッドの中で僅かに寝息を立てる班長の姿があった。
ろくに寝てなかったんだろうなぁ…寝息が深い。
「………」
そっとベッドに寄って、枕元に顔を寄せる。
シーツに乗せた両腕の上に顎を乗せて、近くにある班長の寝顔をじっと見つめてみる。
…こうやって近くで寝顔をしっかりと見たこと、あんまりなかったかも…。
「…たくさんむりさせちゃって、ごめんなさい」
ぽそぽそと小さな声で謝ってみる。
意識は深い微睡にあるのか、班長は全く起きる素振りを見せなかった。
「…たくさんささえてくれて、ありがとうございます」
そっと手を伸ばす。
触れたら起こしてしまうかもしれないから、触れられないけど。
ギリギリ近くで班長の肌に手を翳す。
"見えない傷を、一人で抱えさせていたくない"
昨夜私の胸元に大きな手を翳して、そう言ってくれた班長。
手は触れていないのに…まるで寄り添ってくれてる感覚だった。
あれはきっと形にはない"思い"を感じ取れたから。