第66章 アジア支部
「迷惑だなんて思ってない。俺がしたいからしたんだ、気にするな」
当たり前のようにそう笑って言ってくれるリーバー班長に、ふと思い出す。
"お前の上司だからじゃない。俺自身が、南を支えていたいんだ"
…あれは確かに聞き間違いじゃなかった。
昨夜、真っ直ぐに私を見て言ってくれた言葉。
はっきりと今でも記憶にある。
上司としてじゃなく自分自身が。と班長は言ってくれた。
その言葉通りなら、昨夜くれた班長の言葉は全部…班長自身のものなのかな。
………。
……結構、凄いこと言われたような気がするんだけど…。
「………」
「…南?」
駄目だ、また顔が熱くなりそう。
「ぃ、いえ…でもだめですっ。ぶじアジアしぶにもつきましたし、わたしはだいじょうぶですから。はんちょうはやすんでくださいっ」
慌てて首を横に振って、顔の熱を飛ばす。
とにかく、これは譲れない。
リーバー班長を休ませたくて任務の同行を頼んだのに、疲れさせてたら意味がない。
なにがなんでも、今日こそは休んでもらわないと!
「でもな…」
「まーまー、可愛い部下がここまで言ってんだし。面子立ててやれよ」
それでも渋る班長の肩を、ジジさんが笑顔で叩く。
「俺が代わりにこいつを見てるから、平気だろ」
「………はぁ。わかった」
そこに神田の言葉も重ねられて。
暫く沈黙を作った後、やっと班長は頷いてくれた。
「アジア支部は教団本部に比べて、敷地面積が広いからな。迷子になるなよ?」
「はい。こんどはぜったいに、はぐれたりしません」
何度もそんなことして、迷惑なんてかけたくない。
しっかりと頷けば苦笑混じりに、でもほっとした顔で班長は笑ってくれた。
「ズゥ爺っさまの所へは、ウォンが案内しよう。頼む」
「畏まりました。お二方、こちらへ」
「はい。…あの、すみません。リーバーはんちょうには…」
「ああ、部屋を用意しよう。そこで旅の疲れを取ってくれ」
「すみません、助かります」
笑顔で頷くバク支部長に、頭を下げる班長を見てほっとする。
今度こそ、しっかり休んでもらえそうかな…。