第65章 肌に触れる
「でも、ちゃんとねむれたよっ。それはかんだとはんちょうのおかげだから…っ」
赤くなった額を押さえながら慌てて言う南に、神田は視線を再び落として。
「…チッ」
小さく舌打ちすると、六幻を布袋へと仕舞い込んだ。
どうやら一応、俺の首は繋がったらしい。
…助かった。
悪いな、南。
「ったくよー…それより優先すんのはこっちだろ。ほら南、今更かもしんねぇけどこれで目元冷やしとけ」
呆れ顔で俺と神田を見ながら、屈んだジジが南におしぼりを差し出す。
「ありがとうございます」
「お前はうちんとこの蝋花と違って、そう泣かねぇからなぁ…そんだけ大変な思いしたんだろ?よく頑張ったな」
「ジジさん…」
優しい笑みを浮かべて言うジジの顔は、昔から時々見せていた顔。
部下を思いやる時の、あいつの顔だ。
「──っと、」
いつもの癖で、南の頭を撫でようとしたジジの手が止まる。
恐らくまた神田に殴られるとでも思ったんだろう。
「………」
おしぼりを受け取ってその手を見上げた南が、ぱちりと目を瞬いて。
「…ジジさんが、あのミニゴーレムつくってくれたんですよね」
「んあ?」
小さな手を伸ばして、その手に触れた。
「はんちょうからききました。おれい、いいそびれちゃってて…ごめんなさい」
そのまま自分の胸の前にジジの手を引き寄せて、にこりと笑う。
「ありがとうございます、ジジさん。わたしをみつけてくれたのは、ほかでもないジジさんです」
「………」
「…ジジさん?」
そんな南に、ジジはぽかんと阿呆な顔して──
「南ー!!!!」
「ぅわっ!?」
ガバッと勢いよく南の体を抱きしめた。
…おい。