第65章 肌に触れる
「おま…っ心配させんなバカヤローッ!!」
「すみま…ぅぷっ」
「お前は色々と強がり過ぎなんだよドアホ!!もっと上司頼れ!!」
「ぅ、うん…ぷはっ」
強く抱き込まれた南が、苦し紛れになんとかその肩から顔を出す。
「じ、ジジさん。なかないで」
「泣いてねーよ!こりゃ汗だ!!」
どう見たって涙だろ。
ついでに鼻水も出てんぞ。
ズビズビと涙と鼻水を漏らすジジの顔に、南の小さな手がおしぼりを当てる。
「ジジさんのほうこそ、めがはれちゃいますよ」
「うるせ!」
悪態をつきながらも離そうとしないジジに、南も大人しくその腕に納まったまま。
おしぼりでジジの顔を拭いながら、困ったように笑っていた。
思わずその光景に口元が緩む。
以前もよく見かけていた光景で、ジジのその過剰なスキンシップにはいつも咎める声をかけていたが。
そんな光景に、まさか穏やかな気分にさせられる日がくるとはな。
「はいジジさん、はなかんで」
「お前は俺の母親かよッ」
「はいはい。ちーんっ」
………。
あー…うん……というか。
ありゃ上司と部下ってより、母と子だな。