第65章 肌に触れる
「───…よし、」
ずっと感じていたかったが、時刻も時刻だし。
しっかり5分堪能した後、ゆっくりと体を離して再び腕の中の南に視線を落とした。
「…大丈夫か?」
「だいじょうぶじゃないです…」
見下ろした小さな顔は赤く、恥ずかしそうにそっぽを向く。
そこには拒否する仕草も態度も見られない。
「もう大丈夫そうだな」
「だから、だいじょうぶじゃ…」
「でも何かあったらちゃんと言うんだぞ」
くしゃりと小さな頭を撫でる。
すると不服そうにしていた涙で腫れた目は、まじまじと俺を見上げて。
「…はい」
視線をさ迷わせた後、ほんのりと赤い顔のままおずおず頷いた。
それは以前と変わらない、頭を撫でた時に見せてくれる南の姿そのもの。
つい口元が綻ぶ。
よかった、いつもの南だ。
「じゃあ神田達の所に行くか。あいつにも礼を言わないと」
「ぁ…あの、はんちょう」
「ん?」
腕を解いて南を開放してやれば、小さな体はそこから動かずに俺の服を握ってきた。
なんだ?
「はんちょう…きのう、いいましたよね。じぶんはかんだみたいに、まもることができないって…」
おずおずと口を開いたかと思えば、昨日のことを口にしてくる。
なんだ急に。
「それ…あの、まちがってます」
言い難そうに、間違いだと否定する南につい思考が止まった。
どう足掻いたって正論だと思うが…