第65章 肌に触れる
「触れるだけだから、そう構えるなよ」
「っ…は、はい…」
南から了承を得て、そっとその顔に触れる。
小さな顔に添えるように掌を当てて、親指で頬を撫でる。
きゅっと目を瞑って赤い顔のまま微動だにしない南の姿に、つい口元が緩んだ。
そのままそっと、すっぽり腕で囲うように抱きしめる。
一瞬ピクリと身動いだ南の体は、その一瞬だけ。
後は大人しく俺の腕の中に納まった。
スーツ越しじゃ伝わらなかった小さな体の柔らかさが、服越しに伝わってくる。
「…ちっさいな、南は」
「…こどものからだなので…」
「いや。普段のお前と一緒だ。小さくて、細くて、華奢で」
その腕の細さも体の小ささも、南への想いを自覚してから知った。
知ったからこそ、もっと大事に扱わないとと思った。
だけど今は。
「はん、ちょう…?」
不思議そうにもぞもぞと動く腕の中の存在が愛しくて、小さな頭部に頬を寄せて抱き込む。
大事に扱いたい気持ちと同じくらい、強く抱きしめて離したくなくなる気持ち。
「は、はんちょう…っ?」
…昨夜からずっと我慢してたんだ。
少しくらい褒美貰ったっていいだろ。
「なんだ?」
「え、ええと…なんかこれ……はずかしいんですが…」
「そうか。じゃあ後5分このままな」
「そんなにっ!?」
小さな体でもいつもの雰囲気の南の受け答えに、つい笑ってしまった。