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科学班の恋【D.Gray-man】

第65章 肌に触れる



「え…ぁ…」



きょとんとした顔が、俺の腕の力に気付いたのか。
視線を落として、恥ずかしそうに顔を赤らめた。



「へ、へいき、というのは…」

「俺の腕の中。怖くないか?」

「…だ、いじょうぶ…です」



ぎこちない返事だが赤い顔を逸らして言うところ、照れてはいるが怖がってはいないようだった。
その姿にほっと息をつく。



「そうか…」

「…あの…すみません、はんちょう…いまどきますから…」

「南」

「はい?」



抜け出そうとするその小さな体を、囲った腕の力を少し強めて止める。



「触れてもいいか?」

「…へ?」



問えば…ああ、やっぱりな。
間を置いて状況を飲み込めてない顔を南は浮かべた。

急に変なこと言って悪いな。
でもこれだけは、確かめておかないと。



「今度は、ちゃんと。お前を抱きしめてもいいか」



俺の腕の中で気を許して眠ってくれたことは、勿論嬉しかったが。
やっぱりちゃんと南の意思で確かめないと、まだ不安はあった。
俺はちゃんと、お前の心に寄り添えられたのか。
それを確かめたかったから。



「え…と…だき…?あの…はんちょ…?」



すると限界まで目を丸くした南の顔が、じわじわと赤みを増す。
その口から零れる声は、きちんとした言葉を成していない。



「言っただろ。崩れ落ちそうになるなら、いくらでも抱き止めるって。ちゃんと触れていたいんだ」

「ぁ…」



言えば、思い出したのか。
小さな声を漏らして、更に挙動不審にそわそわと視線を辺りに向ける。

…なんだその小動物みたいな動き。
見てて面白いが、ここで笑ったらどう反応するかな。



「え、えっと…」

「ほら、ちゃんと答えないと。曖昧なのはYESと取るぞ」

「えっあっ」



赤い顔を焦るように上げた南は、俺の言葉に押されたように勢いよく頷いた。



「だ…っいじょうぶ、です」



その言い方は昨夜、必死で一人で立とうとしていた時と重なったが。
真っ赤な顔で慌てて頷く様は、まるで昨夜のその姿とは重ならなかった。

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