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科学班の恋【D.Gray-man】

第65章 肌に触れる



───ああ、そうか。

不思議とそこで、不意に気付いた。
神田がどこまで知っているかわからないが…もし今のこの南の状況を知っていたなら、ノアだけでなく俺達に向けた殺気もわかる。



「………」



それだけ、あいつも南を思ってくれていたんだ。
そう思うと、神田に感じていたもやもやとした気持ちは不思議と消えていた。

………。
………と、いうか。



「…これ、まずくないか…」



不意に気付く、この状況。
スーツで一枚、隔たりのように包んではいるものの、俺の腕の中にすっぽりと納まっている南。
しかもその顔には、酷い有り様の涙跡。

…まずい。
絶対にまずい。
こんな状況、神田に見られたら即刻斬られる。



「の、残り時間は…」



慌てて腕時計を確かめる。
確か神田は10分しかくれないって言ってたが──



「…あれ」



もう一度、時計を確認する。
…もう一度。



「……時間、過ぎてないか…」



神田と約束した10分は、あっという間に過ぎ去っていた。



「………」



思わず閉められた部屋のドアを見る。
俺は神田みたいに気配を敏感に察知する能力なんてないから、あのドアの向こうに神田がいるかはわからない。
わからないが…

いるいないどちらにしろ、中に入ってこないところを見ると…恐らく俺に譲ってくれたんだろう。
一人で南を泣かせない為に、約束したと神田は言っていた。
その約束の内容はわからないが、恐らく傍についてると南に言ってくれたんだろう。
現に今日一日のあいつの行動は、そうだったからな。



「…ありがとな」



そんな南の涙を拭う相手を、神田は俺に譲ってくれたんだ。
それを思うと、自然と感謝の言葉が口から漏れていた。



「………」



もう一度、腕の中で眠る南に視線を落とす。
伸ばした指先で、涙の残る赤い目元にそっと触れた。
余程深い眠りに落ちているのか、南はピクリとも動かない。
ただ単に熟睡してるだけなのかもしれないが、全く逃げる反応のないその姿に酷く安心した。

やっと南に触れることを許された気がして。

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