第63章 葛藤と決断
「大事に思うから、簡単に突っ込めねぇ気持ちはわかるけどよ。今一番大変な思いしてんのはお前か?違うだろ。誰より弱ってんのは南なんだよ」
「………」
「それがわかったから、神田はあいつの傍についてんだよ。…ったく。今のお前より、神田の方がよっぽどわかってんな」
溜息混じりに目の前の飯を食い始めるジジに、俺は微動だにできなかった。
…そうだ。
ジジの言う通りだ。
南が大丈夫と笑って言うから、それ以上踏み込まないようにした。
俺達を無駄に心配させないように、笑っているのはわかったから。
不安はあるが、下手に踏み込んでそんなあいつを傷付けたくないと思って。
「………」
馬鹿か俺は。
とっくに傷付いてんだろ、あいつは。
それでも"大丈夫"だって、俺達に笑ってたんだろ。
「………俺は馬鹿だな」
「お。ようやく気付いたか」
ぐっと拳を握る。
漏れた言葉に、ジジがやれやれと肩を竦めた。
「まぁその馬鹿な所が、お前の長所であり短所なんだけどな」
長所な訳あるか。
「…ジジ。俺はどうしたらいいと思う」
今すぐにでも、南の所に行きたい。
弱っているあいつを少しでも安心させてやりたい。
…でも俺には神田みたいに、あいつを守れる術はない。
どんな言葉を投げかけてやれば、安心させてやれるのか。
それがわからない。
「おっまえ…ほんと、恋愛となるとてんで駄目だな。この仕事馬鹿人間め」
「………そうだな、お前に聞いた俺が馬鹿だった」
「お、ちょ、待て待て待て」
煩ぇな、わかってるよ。
仕事ばっかしてきたから、自分が女性の扱いに慣れてるなんて思わない。
でもそれとこれとは別問題だ。
こんなに大事に思う相手を、こんな時にどう扱ったらいいのか。
そんな正しい解答なんてあったら、テンプレでもいいから教えて欲しいくらいだ。