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科学班の恋【D.Gray-man】

第63章 葛藤と決断



「下手に扱えねぇんだから」



教団でそんな顔を見た時は驚いたが、それ以上に南をなんとか安心させてやりたかった。
だから小さな頭を撫でて、落ち着くまでいつもの態度で声をかけ続けた。
そうすれば、ほっと南は体の力を抜いてくれた。

あの時あんな顔をしていた原因は、今でもわからない。
わからないが…恐らく今回は、その原因の度合いは違う。



相手はあのノアだ。



一歩間違えれば、命も落とし兼ねていたかもしれない。
そんな恐怖を感じた南に、"大丈夫"だとか"安心しろ"とか。
そんな言葉、安易にかけられなかった。
あいつを心底安心させてやれるだけの力なんて、俺にはない。



「下手に扱えねぇからって、腫れ物に触るような態度で南が喜ぶかよ」

「…怖がらせるよりマシだろ」

「怖がらせる?」



つい零れた自分の言葉に、はっとする。
見れば怪訝に見てくるジジがいて、仕方ないと溜息を零した。



「…ノアが出たんだよ」

「……は?」



言えば、数秒遅れでジジが反応を示す。
その顔はぽかんとしていて、



「はぁあっ!?」



一気に驚愕へと変わった。



「ジジ、声がでかい」

「だってよ、お前…ッノアってあのノアだろ…っ?」

「ああ」



辺りを見渡した後に顔を近付けてヒソヒソと、それでも焦ったように聞いてくるジジに掻い摘んで話すことにした。
南がノアに捕まったことを。




















「───はぁ…成程な。だから神田は南の護衛やってんのか…」

「多分な」



ノアだけじゃなく俺らに対しても、だけどな。
一通り説明を終えれば、ジジは盛大に肩を落として溜息をついた。



「南も災難だったなぁ、そりゃ…あんなちっこい体で」



小さい大きいなんて関係ない。
きっと南があのノアにされたのは、女性を屈辱するようなことだ。
ただあそこまではっきりと南は俺に"大丈夫"と言ったんだから、恐らく最悪の事態にはならなかったはず。

…というかなってたら…なんて、思いたくない。

あいつを汚されたなんてことになったら。
俺は一生、昨日の自分を許せなくなる。

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