第62章 名前
「あーあ、弁当ばら撒いちまったじゃねぇかよ…中で悲惨なことになってねぇかな…」
「腹に入れば全部同じだろ。俺は食える」
「お前はよくても俺はよくねぇんだよ…」
「わ、わたしもへいきですから。ジジさん、ありがとうございますっ」
慌ててお弁当と飲み物を拾う。
ばら撒かせた張本人は気にした様子なく、その目を静かに班長へと向けた。
「話は済んだか」
「え?ぁ、ああ…まぁ」
頷く班長を確認すると、あっさりと視線を外して神田は席に座る。
…さっき班長は何を言いかけたのかな。
気になったけど…昨夜と同じ。
それを聞く勇気は、今の私にはなかった。