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科学班の恋【D.Gray-man】

第62章 名前



「いえ、だいじょうぶです」

「そうか?お前の顔、科学班で働いてる時と同じでやつれてんぞ」



あ、やっぱり。

朝、顔を洗う際に鏡で確認してみたら、少し目の下の隈は濃くなっていた。
教団内で働いていた時は徹夜なんて当たり前だったから、見慣れたいつもの自分の顔だけど。
そういう変化を気にかけるくらい…やっぱり、心配はかけてしまっているんだろうな。



「何かあったら遠慮なく言えよ。支部到着が遅れるくらい、誰も気にしねぇから」

「ありがとうございます」



優しい言葉をかけてくれるジジさんに、つい笑みが漏れる。

笑顔はいつものように出せる。
話だって普通にできる。
それは何も変わらない。

そんな自分に、思わず内心ほっとしていると。



「お前は頑張り癖があるからなー」



何気なく笑いながら、ジジさんが私の頭を撫でようとした。



ゴッ…!



瞬間、響いたのは鈍い打撃音。



「ってェ…!?」

「触れたら殴るっつったろ」

「おま…っまだそれ有言実行中なのかよ…!」



頭を抱えるジジさんの後ろで、拳を握ってドスの効いた声を漏らしたのは神田。
今の打撃音は、神田が後ろからジジさんの頭に拳を落とした音。
そんな神田の姿に、本当に約束してくれたんだと悟る。






"誰もお前に触れさせない"






そう、薄暗い朝方の船の部屋の中でイノセンスを私の前に掲げて、神田ははっきりと言ってくれた。
そんな言葉、一度も聞いたことがなかったから思わず耳を疑ったけど…それを本当に実行してくれてるんだ。

神田らしい乱暴な対策だけど、それでも私の為にしてくれてる行為に胸はじんとした。



「お前はどこぞの護衛かよ。昨日からよー…」

「…次やったらそのクソ喧しい口を削ぐぞ」

「わーった、わーった!わかったから!六幻握って威嚇すんのはやめろ!」



口を尖らせるジジさんに、ギロリと威圧感満載の顔で六幻の柄を握る神田は正にAKUMAと対峙する時と変わらない。

うん…これは私にというか、神田本人に誰も触れられない気がする。

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