第61章 弱い心と強い心
迷いなきはっきりとした言葉に、思わず耳を疑う。
神田からそんな言葉を聞いたことなんて、初めてだったから。
「今度は見失わない。お前の体にノア野郎も他の奴らも、触れられないようにする」
初めての言葉だったけど。
真っ直ぐに伝わる言葉に、疑いの余地なんてなくて。
そもそも神田は、こんなこと嘘で言ったりなんかしない。
「だから俺の前では強がるんじゃねぇよ」
「…っ」
口元が僅かに震えた。
───あ、駄目だ。
情けない自分が出そうになる。
「…っ…」
咄嗟に口元を両手で覆う。
駄目だ、こんなところでまた泣いたら。
此処にはリーバー班長もジジさんもいるのに。
下手に起こしてしまう。
「…はぁ」
そんな私をじっと見ていたかと思うと、徐に溜息をついて神田は腰を上げた。
「来い」
「…?」
目で問えば、その体は部屋のドアへと向かう。
「すぐ其処に出るだけだ。リーバーに見られたくないんだろ」
ちらりと振り返った顔が、小さな声で言う。
神田の言う通りだったから、大人しく従うことにした。